キセキの緑

2階のカフェで、桜の花を 一足早く堪能する。
なんとなく、その枝を 捨てきれずにいて水に 挿していた。

枝からは 予想を裏切らず 緑の芽。
やがて、一枚目の葉。
二枚目の葉。
また、芽をだし、枝を伸ばし 三枚目の葉、四枚目の葉  と生い茂る。

新緑の季節ともなれば、緑のグラデーションの世界は当たり前になる。

でも、まだ 本当の春を待つものとしては、このグレーの枝から、
キセキの緑 を だす事は、手品のように 気持ちよく、
つい 生命力の素晴らしさに 見とれる。

時に 人は、手品のようなキセキを、自分自身に思い描いたりする。

でも、冬の準備が きっと  慌てず 春を 教えてくれるような 気がしてならない。

キャラウェイシードのショートブレッド

お客様でキャラウェイシードのショートブレッドが 大好きな方がいらして
私は、 よく その方のために、ショートブレッドを作ってもらうよう
スタッフに お願いする。

オーストリアのウィーンに 、今は亡きご主人と暮らしていた際に
キャラウェイの入ったパンに、ソーセージを挟んで食べるのがお好きだった と
話して下さったことがある。

先日も 「今日 これから ショートブレッド焼きますよ」  とお伝えすると
すぐに お二つ お取り置きをお願いされた。

人生で 本当に大切なものは何か。
そういうことを、 知りつくされたような女性なので、
キャラウェイの味の その向こう側に あるものに 想いをめぐらし お茶をする。
そして、そういう時間を 大切にされているのではないか 、、と 勝手ながら 想像している。

誰かのために、お菓子を焼く。
誰かのために、パンを焼く。
この人のために、料理をする。
この人に、「美味しい!」  と言ってもらいたいから   と。
そういうお客さまに、 少しづつ出会い 少しづつ関わりをもつ。

そして そういうことが 今の自分の波調であり、役割ではないかと 考えている。

万人に 受け入れられる味は ないと思う。
私たちの味を 受け入れてくださる方を 大事にしよう  と思うのだ。

これからも、私は あの方のために、キャラウェイシードのショートブレッドを
焼き続けたいと 思っている。

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